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企業・ブランドの価値観を共有するメディア施策(戦略)

先日、EdelmanのPR戦略プランナーの宮崎様が登壇されたセミナーに参加しました。

 

Edelmanは世界を代表するPR企業です。

 

セミナーのタイトルが「デジタル時代の新しいブランドトラッキング」でしたが、

普段PRを専門にしていない私にとってはブランドトラッキングというよりは、Edelmanのブランド価値向上に関する知見がとても興味深かったので紹介します。

 

 

従来のユーザーとのコミュニケーション

企業がユーザーとのリレーションシップを築きたいと思った時、

どうすると思いますか?

 

企業がユーザーに対して商品やサービスを認知してもらいたい、

知ってもらいたいと思う時、よく使われるのが広告だと思います。

 

広告はその名の通り、広く告知することであり、

「何かを語る」ためのトラディショナルなメディアです。

 

もちろん広告はメディア戦略をとる際に重要な手段として考えられますが

情報過多の時代において

企業側が一方的に発信する広告はユーザーから嫌がられ、

信頼性は急速に低下していると言えるでしょう。

 

アドブロックによってユーザーが広告系のメールを遮断することもあり、

広告が彼らに届きにくい時代になっていると言えます。

 

 

ユーザーに届くメディアとは

ではユーザーとのコミュニケーションがとれ、

ブランド価値を向上させるためのメディアとして何があるのか?

 

そう思った時、挙げられたのが

「共に語る」メディアでした。

 

「共に語る」メディアとは何かお話しする前に

まず2つの事例を紹介します。

 

一つ目の事例はDoveが以前公開した「Free The Kids」という動画です。

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Persil - Free the Kids by MullenLowe London - Web Film

 

囚人の1日の屋外での活動時間と

いかにその限られた活動時間が彼らにとって重要であるかを示しています。

 

囚人へのインタビューなどをもとに彼らの切実な訴えを流していますが、

そこへ「子供達の屋外での活動時間は囚人よりも少ない」という驚くべき事実を

公開するという内容になっています。

 

「子供達を解放しよう - Free The Kids」というメッセージを伝え

社会が抱える問題に対して企業の考えを表現した動画でしたが、

多くの人の話題になり、Doveもその動画を公開した企業として注目されました。

 

 

 

もう一つの事例はREIというアウトドア商品を提供する会社の施策です。 

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REI Stores are Closing on Black Friday - REI.com

 

アメリカではブラックフラーデーという大バーゲンが

サンクスギビングの時期に全土で行われます。

 

そんなアメリカの文化に対して異論を唱えるものです。

 

どの企業もブラックフライデーにはバーゲンを行いますが、

REIは一切ブラックフライデーに参加しないと宣言したのです。

 

サンクスギビングは日本でいうお正月のようなもので

世間はおやすみムードなのですが、

ブラックフライデーの時期は店舗で働く人などにとっては

正月に働かなくてはいけないような憂鬱な状況なのでしょう。

 

REIはそんな社員の気持ちを汲んで、また企業のアウトドア精神に準じて、

彼ら従業員に心身ともにリフレッシュしてもらうことを目的に

ブラックフライデーの放棄を宣言したのです。

 

企業にとっては一番の書き入れ時であり

思い切った政策でありましたが、

人々の目に留まり、話題になり、

真似する企業まで現れました。

 

このようにREIは全米の話題になり”buzz”を起こしたのです。

 

 

ユーザーとの「価値観」の共有

2つの例を紹介しましたが、

二つには共通点があります。

 

下の手書きの対比を見ていただきたいです。

(手書きですいません。。。)

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メディアにおける施策は左側の「Value」もしくは右側の「Values」を訴求します。

 

図の左に位置するのが「商品特性や企業価値を訴えるメディア施策」で、

右側に位置するのが「企業・ブランドの価値観や信条を訴求するメディア施策」です。

 

例に挙げた2つの事例の共通点は、

右側の”価値観”を提供した施策であったということです。

 

ソーシャルニーズ(社会的な要求)を捉え、

それに呼応するような形で企業の価値観や信条を提供しています。

 

それに対してユーザーは企業が発する価値観に共感できた際に

深く企業に対しての好意を抱くことがあります。

 

Edelmanの調査によると

ユーザーが商品の特性や「価値」を感じた時より

企業とユーザーが「価値観」で共鳴した時、

その関係性ははるかに深いものになることがわかっています。

 

 

価値観でつながることができたユーザーは、その企業・ブランドに対して

高いロイヤリティを提供するでしょう。

 

この価値観で通じた関係性は

商品特性や企業価値を訴える広告ではなかなか築くことができません。

 

価値観を共有するために今改めて注目しなくてはならないのが

アーンドメディアオウンドメディアでしょう。

(広告:ペイドメディア)

 

広告においても価値観を共有しようとするマーケティング活動はありますが、

アーンドメディアやオウンドメディアの方が価値観を発信する場として

より効果的になっています。

 

広告を始めとするペイドメディアは発信するために

かなりのコストがかかるのに対して

アーンドメディアやオウンドメディアは物によっては

ほぼコストがかからず発信できるのです。

 

もしユーザーとの価値観の共有を図れるようなメディア施策を

打ち出した場合、企業にとって利益は高く、

とてもROIが高い施策と言えるでしょう。

 

 

ユーザーと企業・メディアとのリレーションシップの変化

 

今回のセミナーを聞いて、

ユーザーの企業やメディアとの関係性の変化を実感させられた思いです。

 

普通にマーケティングのことを考えていると、

どのようにユーザーにこの商品を好きになってもらえるか、

どうすれば良く見せることができるかなどに重きを置いてしまいます。

 

そのようにマーケティングをすることは悪いことではありませんが、

一方でユーザーが企業・ブランドと価値観を共有することで

企業に対して好感を得るルートがあります。

 

価値観の共有がユーザーと企業の関係性を一層強くする方法で

これからのメディア戦略においてはより注力していかなければいけない領域だと感じました。